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飲茶と陳皮

香港が日本を抜いて世界一の長寿国となった。まず、香港人とは何かを検討すると、元は中国人であっても現在の中国人でも台湾人でもなく、中国の伝統文化を基本にしている人々で、共産主義を嫌って香港に移住してきた、共産革命前の中国人の中でも生活レベルが高く、教養の高い人たちと言える。教養の高さは健康度合いに比例し、教養の高い人ほど健康的な生活を送っているのは日本でも同じ。

健康に大きく影響を与えるのは食事と運動になるが、日本と香港を比べると食事、運動、治療に関し様々な異なる点がある。

1.      料理

食材:豚肉・鶏肉が多い、豚肉はVB群を多く含み疲労回復に良く、豚足はコラーゲンが多く骨の強化に有効、鶏肉は脂肪分が少なく、特に胸肉にイミダペプチドが多く自律神経中枢の細胞をさびにくくし、疲労感軽減に役立つ。

料理方法:飲茶の如く蒸した料理が多く、炒める・焼くよりも“AGE:糖化”度合いの低い食事になり、蒸すことにより豚肉・鶏肉の脂肪分を落とせる。

薬膳料理:漢方薬からヒントを得て調味料として考案された。唐辛子(脂肪燃焼、発汗、血行促進)、陳皮(血行促進、咳を鎮める)、黒ゴマ(肝機能、腎機能の向上)、粉山椒(胃粘膜の強化、整腸、冷え性改善)、麻の実(貧血予防、美肌効果)、けしの実(悪玉コレステロールの低下、疲労回復)

飲料:ジャスミンティーで食事中の脂肪分を体外へ流す、冷たいお茶は飲まない、体温が1度下がると免疫力は30%減少する。

こうして見ると、日本で普及した中華料理のメニューとは大分異なる。餃子は水餃子が一般的で焼き餃子よりも糖化度が低く、脂肪分も少なくなる。香港での飲食店というと最も一般的なのは飲茶になる。野菜や豚肉を薄い澱粉質の皮で包んで蒸し器に掛ける。これで温野菜、脂肪分の落ちた豚肉、少量の糖質が摂れる。

2.運動の重要性

スタンフォード大学が70万人のスマホの加速度センサーより世界中の人々の1日当たりの歩数をチェックした所、1位が香港の6880歩、中国全体で6189歩、日本人は中国人についで多くに6019歩。香港は2016年に日本を抜いて男女ともに世界で一番の長寿国となっており、毎日の歩数と長寿が密接に関係があることが分かる。


3.      治療

漢方薬:柴胡、甘草、枳実、芍薬、蘇葉、山椒、ハッカ、葛根、桂枝、生姜、麻黄、陳皮など数多くの材料を利用する。中でも陳皮、(ミカンの皮)は漢方の中でも広く使用され消化不良・食欲不振に効果的。最近ではミカンの皮に含まれるβクリプトキサンチンは肺ガンや子宮頚部ガンを6割減、食道ガンを8割減などガンを抑える効果があることが分かっている。

鍼灸:全身のツボをハリやお灸などで刺激して様々な症状を緩和する。経絡(気、血、水の通り道)の上にツボが点在している。ツボの刺激が脳へ伝わり、全身へ信号が送られる。

こうして香港人の食事内容や治療法を検討すると、中国人が長い歴史の中で経験的に学んで来たものが現在の医学に照らし合わせても適正であることが分かる。糖化(AGE)が長寿に重要な影響を与えること、陳皮の効用としてガンを抑えるのに効果的な事などは日本では最近知られてきたことなので、これ以外にも香港人の生活に学ぶと数多くの長寿の理由が出てくる可能性が高い。

日本人の死因はガン、心疾患、肺炎が主なものになるが、陳皮が各種のガンの発生を抑制し、飲茶により糖化を抑えると共に豚肉などの脂肪分を減少させ、ジャスミンティーにより脂肪分の吸収量を抑えると血管内の脂肪の蓄積を減らして心筋梗塞などの心疾患を減少させることを考えると、日本も飲茶・陳皮を日常的に取り入れることにより更に長寿の国として発展するかもしれない。


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